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BRUTUS Special Issue – Inoue Takehiko #2

BRUTUS #642 - p028 p029

描く、描く、食べる、描く、寝る。 100枚斬り!のアトリエ血風録。 服に散るのは赤い血糊でなく黒い墨。アトリエでは息もつけない激闘が続く。 展覧会スタートまで約2週間を残すばかりのアトリエは、すでに「非常事態宣言」の発令下にある。通常、井上雄彦の1日スケジュールは、朝7時半頃に起床、朝食を済ませた後、9時頃にアトリエに入り、作画作業を始める。夜は一度帰宅して夕食。21時~22時くらいに再びアトリエに戻ると「眠くなるまで仕事」。しかし修羅場モードに突入したら最後、「ひたすら描く。それ以外にない」。起きている間は食事を除いて作画に没頭、自宅に帰ることもままならない。そんな状況にあって、最近使いはじめたのが、メイクアップ用のブラシで世界的に知られる広島県の筆メーカー、白鳳堂の画相筆だ。もともと井上は道具に対するこだわりが薄く、あるものを使う、ダメならダメなりに我慢して描く、というスタンス。同じメーカーの同じ種類の筆であっても「個本差」が激しいため、通堂筆1本あたり10枚程度作画できるところを、質の悪い筆は1コマで新しい筆に取り替えることでしのいできた。ところが知人に紹介されて手に取った白鳳堂の画相筆は、いいクルマに乗った時の疲れ方が違うように、ストレスなく描ける。1本当たりの作画枚数も20枚近くと、効率がいい。展覧会前の修羅場に投入することができてよかった、と井上。和紙を張った大型のボードには刷毛や太い筆に墨汁で描いているが、ケント紙には墨汁より黒が濃く強く、無光沢で耐水性に富んだ〈開明〉のレタリング用インクを使っている。アシスタントが筆を使うことはなく、背景などペンで処理する作業のみ。  ...

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